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塗装道具と足場の恋〜第二章〜
深夜、大越塗装の作業場に静寂が訪れるころ、塗装道具たちはひそひそと語り合う。しかし、その中にいつも少し離れて物思いにふける者がいた。
それは、一振りのローラー、「速塗(はやぬり)」だった。
彼の視線の先にあるのは、現場でいつも彼を支えてくれる足場、「ステラ」。
「お前、またステラのこと見てるのか?」
親友の刷毛「龍毛(りゅうもう)」がからかうように言った。
「別に、そういうんじゃねぇよ……。」
「ふぅん?でも、いつも現場じゃステラに頼りっぱなしじゃねぇか。」
そう、速塗はどれだけ器用に塗り進めても、足場であるステラがいなければ、その力を発揮できない。
「そりゃ……俺はただの塗装道具だからな。ステラがいなきゃ、どんな壁も塗れやしねぇよ。」
「じゃあ、言ってみたらどうだ?『いつも助かってる』ってよ。」
「そ、そんな簡単に言えるわけねぇだろ!」
ローラーが赤くなるわけではないが、速塗はそっぽを向いた。
翌朝、現場に出ると、ステラが組み上げられていた。どっしりとした姿で職人たちを支える、頼もしい存在。
「おはよう、速塗。」
いつもの優しい声が降ってくる。ステラだ。
「……お、おう。今日も頼むぜ。」
「ふふっ、もちろん。あなたがしっかり塗れるように、しっかり支えるわ。」
速塗の心が跳ねる。
「ステラ、いつもありがとな……。」
「え?」
「いや、いつもお前がいてくれるから、俺もちゃんと仕事できるんだよ。」
「……嬉しい。そんなこと言ってくれたの、初めてじゃない?」
足場は、静かに微笑んだように見えた。
その日、速塗はいつも以上に丁寧に、そして誇らしく壁を塗り上げた。
そして誰も知らない夜、作業場で龍毛が言った。
「よう、速塗。今日はよく塗れてたな?」
「そ、そうか?」
「そりゃそうだ。大好きな相手に支えられてたんだからな。」
「バ、バカ言うな汗!」
ローラーと足場の距離は、今日も少しだけ縮まった。
大越親方、大切なモノに気づく
その日の作業が終わり、大越親方はいつものように道具を片付けていた。
「おい、速塗。なんだか今日はいつもより調子がよかったな?」
手にしたローラーをじっと見つめる。
「お前も、だいぶ使い込まれてきたな。けど、まだまだいけるだろ?」
親方の視線は、ふと足場のステラへと移る。
「そういや、この足場もずいぶん俺たちを支えてくれてる。…ん?」
親方は不思議そうに微笑んだ。
なんとなく、ローラーと足場の間に流れる、目には見えない「何か」を感じた。
「ははっ、気のせいか。」
そう言いながらも、親方はそっとローラーを優しく撫で、足場の安定感を確かめるように足元を踏みしめた。
「よし、明日も頼むぞ。」
作業場に静寂が戻る。
ローラーと足場は何も言わなかったが、その夜、いつもよりほんの少しだけ近くに並んでいた・・・❤️。